「重い実」:男性版八百比久尼誕生。「枕小路」同様に蟲の影響のスケールのでかさに違和感を持つけど、それは自分がこの作品を生物学ものだと曲解しているためなのかもしれない。これは飽くまでファンタジー、おとぎ話であるのに。
「硯に棲む白」:もくもくと空に向かっていく桃色の豊かな雲の様子に、子供のころよく見ていた大きな空の感触を思い出した。タガネはこれまたさっぱりと(悪くいえば色気のない)した職人肌の女性キャラだなあ。問題の硯は、本当に美しいと思える質感が持たされていた。硬さの中に柔らかさを秘めた漆黒というか。