2006年09月18日

「シュヴァリエ」劇中年にまつわる考察

「シュヴァリエ」は“時代もの”というカテゴリーにあてはまる作品ですが、『史実と虚構が入り交じる』という番組宣伝ナレーションが語っているように大胆にパラレル構成された側面も色濃く持っています。

とはいえ、大体の年代を仮定しないまま見ていると、どのキャラクターが史実に忠実に設定され、だれがアレンジを加えられて配置されているのかが混乱するようになりがちです。よってあえて劇中年を絞ってみると、

まず主人公デオンが仕える現王のルイ15世の在位は1715年から1774年。その孫であるオーギュストが生まれた年は1754年で、彼は劇中では10歳前にみえることから、ここに劇中年を1760年と仮定してみます(ルイがつくらせた機密局の創設年が1755年ということからも妥当なはず)。

そうすると1728年生まれとされるデオンの年齢は32歳。うーん、アニメの主人公設定としてもキャラクター設定との乖離からも少々不自然な数字。となるとここからして既に、史実とのズレが生まれていることになりますね。つまり「シュヴァリエ」におけるデオン・ド・ボーモンは史実の『女装の騎士』より10年は若いという設定かと。

さて他のキャラたちの劇中年齢はというと、ルイ15世:50歳、王妃マリー:57歳。うーん……うーん……駄目だな(笑) こりゃむしろ機密局の創設年をずらす方が話がはやいのかも。というわけで仮定幅を1750年から1760年と拡大

しかしここで大きな課題が。キャラクターデザインでは若々しい顔を見せているルイ15世最愛王、しかしオーギュストを「息子」と翻案してもらえばよかったのに、史実に則して「孫」と設定されてしまっている。となると、20歳のときに息子が生まれたとして、その息子がまた20歳ぐらいで子を成したとして、オーギュストはすくなくとも6歳には見えるし、ということで最愛王の年齢はどうも45以上には下げられそうもない。そんなわけで再び仮定幅を絞って、とりあえず1755年に仮定してしまっていいのではないだろうか。

結論:思ってた以上に史実部分に対しての虚構割合が大きい。これは歴史ものにカテゴライズしたらはっきり不正確かも。そして劇中年はおおよそ1755年。そこから導き出される設定年齢はルイ15世:45歳、王妃:52歳、公妾ポンパドール:34歳。この三人は史実の生誕年をそのまま使用と考えた。

ここまではまあいい(とはいえキャラクターデザインよりやはり老けた数字だけど。当時は貴族は平民より若々しくみえただろうという主観補正も可能だし)。しかしここでオーギュスト(後のルイ16世)の問題がまたまた浮上。史実通りに計算すると彼は1歳となってしまう。とすると、彼の生誕年もまたデオン同様操作されたとするべきで、デオンの年齢を史実より5年若い22歳として、オーギュストの生誕年は逆に5年早めて現在齢を6歳とする。

さて劇中では最愛王の叔父として登場するオルレアン公のことだけど、第三ブルボン・オルレアン家の4代目当主であるルイ・フィリップだということは、番組エンディング映像で表示された生没年から判別できる。生誕年はマリー王妃と同じ1703年ということで、年齢は甥である最愛王とわずか7歳違いの52歳。なのはいいとして、家系図をみる限りでは遠縁の親戚という感じで、ルイ15世の叔父だというのはアレンジされた虚構ということになるみたい。

で、はちゃめちゃが過ぎるマクシミリアン・ロベスピエールの設定についての考察は割愛(笑) だって少年時代にルイ16世の前でラテン語朗読したという人物が、ルイ15世のもとで幼年期をおくっているオーギュストよりとっくに長じてるんだからほんとわけわかんないですよぅ。

結論の結論:「シュヴァリエ」において史実とのすりあわせ考察はあまり意味を為さない。あまり考えすぎることなく楽しむのが吉とみた。
posted by 三和土 at 11:29| Comment(2) | TrackBack(0) | アニメ/TV番組感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする