もしかしたら初の鏡花作品アニメ化な「天守物語」。前章ほどでないにせよ、こっちの男主人公も地味にろくでなしだ。お静への誠意が足りねぇよ。キープ感丸出しー。特に二の幕での「おまえには関係ないっ」がひどい。ゆえに後半でのお静のハッスルぶりはむしろ応援したくなったよ。だって野鳥にエサやるようなやさしい娘がだよ、女ものの櫛ひとつで大決心。痴れ者で何しだすか分からん殿に直訴するわ、挙げ句にたすき鉢巻きで自ら妖怪城(姫路があんな魔性の地だとはおら知らんかった)に乗り込み、恋敵をぶっすり、結局はもののけ化した夫を見てすたこら遁走ですよ。気持ちいいまでの捨て石キャラっぷりでした。いやでも、ああいうタイプはたぶんちゃんと立ち直って、幸せに再婚してると思うんだ。むしろそうあるべき。
で、一言で述べれば面白かったけど、もう一歩踏み込みが足りないかなという箇所もいくつか。キャラクターの感情の流れが急に見えるのは惜しいし、最高潮の富姫変化からラストシーンまでの描写に美意識が足りてないなと感じたのも事実。それでも、名倉靖博氏のはかなげで美しいキャラクターを動かしていたのには感心したし、床の映り込みCGが巧かった背景美術も良かったし、忘れ神たちの人ならぬ挙作(侍女たちのデザインみんな好きだあ)もきちんと演出されてたし、人を喰うもののけということで適度にエグい表情があったのもホラーとして正しい。そしてなにより、白鷺城攻略をきっちりしっかり描いた点に感心。ちゃんと盛り上がりポイントできてたわけだから。
しかし、侍の「こりゃあぁ勝てんわ」って台詞まわし、あれはギャグなの?さて「四谷怪談」が『恋って病気の一種だよね』というテーマだとしたら、「天守物語」は『恋はやっぱり究極のわがままだよなあ』がテーマだと考えるわけですが、最終章の「化猫」ははたして。