今監督の作品はどこか設計図がほの見えてしまうというか、構成する諸要素がカッチリまとまりすぎている印象があっていまひとつ私は入り込むことができなかったんですが、本作はうれしい例外となりました。いい具合に複数人のディスカッション効果が出ている感触。特に脚本を連名担当してる水上清資氏のくだけた持ち味が大きいと思う。たぶん。
まずキャストの話からすると、アムロ…アムロなのかい? と思わず脳内でつぶやく時田役の古谷徹氏が新境地といった感じ。稚気の残った愛すべきキャラを活かすには、あの若々しい声質が大正解。ヒロイン役の林原めぐみ氏も同様で、天性の媚びと自然な知性を両立させてる演技力のために(対照的かつ背中合わせの存在である)パプリカも敦子も同じぐらい魅力的に立たせている。そして「千年女優」でも二枚目役を堂々と張っていた山寺宏一氏の演技は本作でもセクシーでした。人格の矮小さを虚勢で隠してるような小山内というキャラクターの等身大がよく浮き出てたと思う。
個々人の無意識が投影される「夢」がモチーフの作品だけにストーリーの流れを追うのが少々つらい部分もあり、テーマ的な理解には時間がかかりますね。私は二日ほど経って、ようやくクライマックスの対峙の意味が分かった気がした。自分の意識下の欲求を真正面から受け止めた敦子が状況の主導権を握ることで事態を収拾したと。「夢」の力を過信も矮小化も神格化もするなかれ。それがピンとくるまで、「いまのご時勢にこのリアルな幼女裸体はけっこうギリギリだよな」という部分ばっかり気になってた(笑) あとラストシーンもあっさりしすぎだと当初は感じたけど、あれもパプリカが日常的に患者たちをさりげなく導いて救っているという事を洒脱に見せているのかなと今は解釈しています。
アニメート部分については良くない部分がないから、かえって言うことがありません。有り体なこと言えば、パプリカの軽やかな動きが目に焼き付きました。とか。