筋立て自体は非常にオーソドックスというか定型なアクション主体回なんだけど、これまでのストーリー上や演出面での積み重ねが活かされているので見応えはきちんとありました。
笑顔の裏側を自分の言葉で語ったのりが意外に重要な役割を果たしたのも良かったし、ジュンの回想の中で黒板の前で佇んでる巴の姿に込められたニュアンスもよく伝わってきた。彼女はジュンよりもずっと平然とはしているけど、しかしおそらくは同じ様に学級委員を押し付けられたんだろうね。単に“真面目に見える”というだけで。巴にとっては、平常心を崩さずに他人から期待された役割をこなすのが“戦い”の内実。のりにとっては弟を親代わりに包み込んで、なおかつ笑顔を意識的に絶やさずに家の空気を明るく保とうとするのが日々の“戦い”だった。その事をようやくジュンが気付けたわけっすよね。そのクライマックスシーンの鍵を直接握るキャラクターとして、単なるムードメーカーかと思われたのりを持ってきたのはほんとになかなかのサプライズでした。
ローゼンメイデンたちに生命力を与えるミーディアムとは、自分自身や現状に強い不満を持っている人間がなるものなのかもね。理想的な自分像を求める魂が「お父さま」にとっての理想少女を目指す自律人形たちを引き寄せる。人間たちの“変わりたい”という気持ちがローゼンメイデンたちに投影されることで人形たちの存在意義が肯定される。
目覚めている間の真紅たちは、常に人間からの視線を必要としているのでしょう。なぜなら彼女たちは変わり続けることを必然としながらも、少女としての無垢さという面では変わることは許されない存在だから。ミーディアムと暮らすことでより自然な“少女”を心理上で学びつつも、特定の人間からの視線を意識し続けることで、完璧に愛らしい自分を保つことをおそらくは永遠に続けなければならない。考えてみればおそろしいことっすよ…
そういった自分たちの運命に、たぶん真紅だけはうっすらと疑問を持っているのではないかな。だからこそアリスゲームの単純な勝ち負けにはあまり拘泥しようとはしない。単なる勝手な妄想かもしれないけど、真紅は“完璧な少女(=アリス)”を自分の中で失うことなく、なおかつ人間と同じ様に他人の意識から独立した存在になりたい(ちなみに、この両者を現実生活で調和させようとしているのがロリータファッション趣味の人らではないかと…)と考えている唯一のローゼンメイデンかもしれない。けれども水銀燈の攻撃で片腕をもぎ取られた時にみせたか細げな動揺でも分かるように、彼女自身も完璧な人形でありたいという気持ちと人間のように自由な存在になりたいという気持ちの間で揺らいでいる。そこに、ジュンとの共感の絆の秘密がある気がする。真紅の心の“戦い”こそが、もっとも孤独なものかもしれない。その事にもまたジュンはようやく思い至った、今回はそういう話だったのではないかと。
ところでステッキで戦う真紅は画面映えしてましたね〜 ステッキってたしかトラディショナルな場では少女の持ち物ではないような気がするんですが、そこに彼女の幼い容姿と成熟した魂のアンバランスがほのめかされているようで萌えました。