WEBアニメスタイル内「凸凸団が行く 第1回 5.1ch『ガンダム0083』を観るの巻」中の、(以下引用)
吉松 宇宙っぽくていいんじゃないの。オイラは、艦長に紙を見せに歩いていく男にPANつけていくのが気になったなあ。「なんで!?」って(笑)。作画も撮影も大変なのにねえ。
水島 あの頃の演出って、まだああいう感じだったんだよ。そういう芝居の段取りを省略するのが一般化するのは『エヴァ』以降だと思う。
アニメ様 歩いてくるカットを省略して、シーンの切り替わりで、いきなりその場に立たせたりね。
水島 昔はみんな、アニメの中ではキャラクターの移動が、演出的に必要だと思ってたんじゃないのかな。俺も、そういう理由で動かすのはあまり好きじゃないんだけど、会話に参加させるために歩いてくる段取りが必要な事はありますよね。
昔のアニメにはよく入ってて、現在のアニメにはあまりないのはそういう“名もなき人々が生きて動いている何気ないカット”なんじゃないでしょうか。視聴者の意識野に世界観を植え付けるのは、むしろメインキャラの芝居よりもそういった一見無駄で必然性が分かりにくい演出なのでは?
双方ともバリバリ現役な演出家とアニメーターである水島精二氏と吉松孝博氏が、作業上での効率性のみでこの件を語っているあたりが、現在のアニメ制作の現実を端的に示しているような気がする。
心に残るアニメとは“視聴者もその作品中でキャラクターと同じ空気を感じて、つまり同じ場にいることが感じられる”作品だと思う。ここ数年もすばらしい出来のアニメをたくさん見ることはできました。しかしそのほとんどが“フレーム外から眺めてアニメーターの技である動きやストーリー構成の巧みさに感心する”のみにとどまっているような気がする。つまりは、商品としての消費速度が上がってしまっているという点に由来しているってことなんだろうけど。