潮騒の微妙な遠近感や海中に引き込まれたギンコのモノローグの耳の中にこもった音質といったサウンドコントロールも見事で、しかし何より美しかったのがさまざまな空の色(あの夕暮れの澄んだ桃色の雲間…!!)を映す凪の波面。海の様相とは、空からの反射と切って離せないものなのだと再認識させられるリアルさでした。
生物進化的には、処女懐胎(いさなを産んだ澪は既婚者だから正確には語義が違うが)に近い“生み直し”が当たり前に行われるあの島は袋小路状態で、ギンコが逡巡しかかったようにいずれはあまり良くない事になりそうな予感も。しかしそれでも、村人たちの取り戻した家族と暮らす安寧な表情には私も羨ましさを覚えます。
…でも今回の発想モチーフとなってるであろうクローン技術に関してはなんの感慨も持ってないけどね。遺伝子が同じであろうと別の存在としか感じないと思う。つまりは、たとえ欺瞞であろうと蟲の介入を天のたまさかの恩恵として受け入れる島のあり方自体に魅了されている感じかな。