2006年11月06日

ケモノヅメ#13(終)「味は関係ない」

時代と状況の違いから父ほどに道場へのしがらみを持たない俊彦には、剣の道とはくらべものにならないほど由香(とお腹の子)が大事だった。だから、彼は奥義ケモノヅメへの選択を頑として取らなかった。ラブアンドピース。そんな彼の姿に大葉は言う、おまえも父親と同じく食人鬼の女の躍動的な肢体に溺れているだけだろうと(死にそうなほどうらやましかったらしい)。しかしプレゼントのオムツを下痢対策のために装着した姿までさらし、片腕を失い、我を失って鬼化した由香に腹を串刺しにされながら(このシーン、通常は貫く側である男が貫かれる側の負担に積極的に共感しているようで背徳感と感動とを同時に覚えた。十蔵が春美の腕を切断して自分に装着した展開と同じぐらい渋エロい)も由香に近付くことをやめなかった。すごいぞ、手錠プレイの“成果”はこんなとこにもあらわれてるんだな!! 鬼姿の由香でも、俊彦はほんっきでかわいいと思ってると信じられる。そんな瞬間だった。さーいごにかならずあいがかつー

ラストシーン、俊彦から離れることで死者たちを悼み二人の関係に決着を付けようとスカイダイビングする由香に、俊彦は装備を拒否して生身で後を追いかける。由香が自分を抱きとめると信じている、いや信じる必要もないから。そこに、大葉がひたすらに欲望していた『味』は関係なかった。

この最終回の感想を端的にいえば、こんな許せる超展開は初めてです。むしろ破天荒な筋流れだからこそ詰め込めた全編クライマックスの嵐。都心へと転がりゆこうとする巨大ガスボールとその発信源を舞台に、生き残ったキャラたちのオールスター出演。っていうかほおずき、おまえは要領良すぎ(笑) ちゃっかり年越しそば食ってんな。男と女、親と子、旧世代と新世代、片恋慕を認めた者と認めない者、理想と現実。それぞれが様々な面でもって斬り結ぶ。映画が庶民の週末のおたのしみだった古き良き時代の、大団円を見せてもらった気分です。これは全話ぶっとおしでスクリーンで上映しても、違和感なく楽しめる構成なのかもしれません。だって、序盤から出てた些細なギミック演出(携帯電話がその一例)とかがきちんと昇華されてるもの。

ありがとうございました。極上コースが甘いデザートをもって終了してしまった事実に寂しさを禁じ得ませんが、今はただ簡潔に讃辞を述べるしかない。ごちそうさまでした。

そんな折、ありえないぐらいクオリティが安定していたこのシリーズの中であえて個人的ベスト3を選んでみたんで順不同で以下記しておきます。

#4「過去の苦み」:春美のスカート丈が昭和映画テイストでなんかなつかしー。あと鍛錬中の刃ちゃんにお茶さしいれるシーンの静寂な中を桜の花びらが振り落ちる演出が好きです。

#5「女の隠し味」:梅田が姫子に入れ込む過程のテンポのコミカルさとシニカルなオチのあっけなさとの落差に痺れる。あと重量級の体格に似合わない身軽な梅田の孤軍奮闘シーンがかっこよすぎる。

#8「監禁は鉄の味」:アクション描写がもしかしたら一番印象的な回で、なかでも爆笑必至な椅子ぶんなげコンビネーションの無茶な動かしぶりは必見。あれ、どっかのPVでリミックス使用されそうだわ。あとなかなかに人道的配慮と興趣に富んだ食人鬼武闘派たちの俊彦尋問シーンも見応え抜群。しかし何度思い返してみてもやはり岳人は男前すぎる。
posted by 三和土 at 02:37| Comment(0) | TrackBack(0) | アニメ/TV番組感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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