二の幕はミステリー要素がかなり効果的に演出されていてぐいぐい惹かれたのですが、解決編である大詰めでの真相の見せ方が分かりづらいというか、猫と被害者の娘たまきとの結びつき、それらと加害者の欲望と欺瞞心との絡み合いの求心力に強さが感じられない。まあ有り体にいってテーマが見えづらかった。あとはやはり薬売りの男の素性の設定をもうちょっと固めておいた方がカタルシスがあったと思うんですけど。
しかしまあ、ああまでビジュアルを凝ってある以上は脚本の完成度や演出がそれをフォローしきれていない事に多少難があろうとさして問題ではないかもしれないという気もしますけどね。ただ個人的な好みとしては、やはりビジュアル趣向<脚本と演出のコンビネーション ということであり。
ともあれノイタミナ枠では異例のオリジナリティを持つ「怪〜ayakashi〜」、かなり楽しめました。一番興味深いと思ったのは江戸時代当時の芝居の洒脱さをきちんと意識した小中千昭氏のシナリオによる「四谷怪談」。こちらのコメントではじめて意識したけど、『東海道四谷怪談』初演時は『仮名手本忠臣蔵』とセットで一幕交互に上演されたそうで。つまり現在では単なる忠義美談として人気のある忠臣蔵を、当時の人々はもっと引いた視点でどろどろした人間劇と背中合わせのものとして相対させていたという事なんですよね。すごいや、江戸のひとたち。