2007年01月10日

009-1#12(終)「夜明け」

大西信介氏がメインライターとなっている作品の特徴として、世界のバランスが崩れる危機という大きな(状況という名の)フレームが、主人公が自分の精神内で起こった再構成に一区切り付けるというパーソナルなそれに終盤ですりかわって(あえて悪い言葉でいえば)なにやら有耶無耶な気分の視聴後感が与えられているというのがあると考えられるけど、本作は60年代懐古趣味というさらに大きなフレームが非常に機能していたために、石森作品の時代がかった虚無的なテイストを活かしながらも、主人公ミレーヌの主義主張では動かない現代人に通じる一種ドライなキャラクター性に立体性を付加することに成功して、最終的に一本筋を通すことができているのではないかと。

ってなんだこの超長いセンテンスは!! 全然ねらってないのにどうしよう(笑)

私はとても好きになりましたね、この終わり方で。ミレーヌの職業人生にも、延々と続く世界の冷戦構造にもなんら表立った変化はないまま(蛇足ながら続編も作れそうな感じで)、けれどミレーヌや世界の『弱者』たちに夜明けを見る可能性を再確認させての終幕。

“自由とは与えられた状況に価値があるのでなく自身で選ぶこと自体に意味がある”という古いテーゼを仕立てなおすことで、シリーズに決着を付けたのだと思います。…その「自由」のために弟が無念の死を遂げる様を目の当たりにすることになったのは悲劇としかいいようがないけど。ただ、そんな重ささえ受け止めて日常に戻れるミレーヌは強いと思うし、そんなアイロニーに耐えつづけようとする彼女には共感すら抱きました。真のハードボイルドとは、割り切れるかっこいいものではないよね。
posted by 三和土 at 18:39| Comment(0) | TrackBack(0) | アニメ/TV番組感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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